「友達はみんな兄弟」

馴染みのスナックで飲んでいると、たまに昔話に花が咲く。そんなとき、決まって男たちは幾分、感傷的なまなざしを漂わす。

「イシダヤが親父になったんだって・・・」
「あのころ、暴れてたから、女にはモテなかったよな・・・」
「今もたまに来ると暴れてるよ・・・」
「この間は広尾にあるアメリカンマーケットの2階で暴れてた」
「こんなとこで何してるんだ、って怒ったら、イシダヤの奥さんが横から顔を出した。上智出の才媛と聞いていたが、可愛いヒトだった。あの中年の飲んだくれのどこが良くて結婚したんだろうね」
「でも幸せになってよかったな・・・」

一同、うなずく。

「ロクちゃんが破産したって聞いたけど、最近来ないの・・・」
「ロクのヤツ、昔はいつも7、8人引き連れて飲みに来ていたな・・・」
「しかも、見境なく誰にでも、知らない奴にまで奢っていたね」
「覚えてるよ。見たこともない奴がロクの友達だとか言ってゾロゾロついて歩いてた」
「そんな飲み方するから破産するんだよ」
「少しは静かにしているのかな・・・」
「ぜんぜん変わらないよ」
「今はロシアンバーに、はまってる。相変わらず同好の士を募って通い詰めてるよ・・・」
「懲りないね・・・」

一同、うなずく。

「ロクちゃんと言えば、可愛いコをよく連れてたよね・・・」
「ヒトミちゃんだろ・・・」
「いや、マイちゃんだよ、お前も付き合ってた・・・」
「オレは1ヶ月ぐらいしか翻弄されなかったけど、そう言うオマエこそ3ヶ月は沈没してたろ、なあマスター・・・」
「2人は兄弟か・・・」
「するとロクちゃんも入れて3兄弟・・・」

離れて座っていた顔なじみの客が深い溜息をついて首を振る。

「いや、4兄弟・・・」

一同、沈黙。

「驚いた顔して、ニシヤンはどうなんだよ・・・」
「オ、オレも、一度夜食がわりに食べられちゃった・・・」
「じゃ、みんな兄弟か!?」

一同、うなずく。

こうして、夜が更け、仲の良い兄弟たちの昔話に花が咲く。スナック大好き。